富山県のダム
水力発電について  
水力発電は、水車を水流で回転させ、発電機を回して発電する方式であり、かつては最も一般的な発電方法であった。
最近では、火力発電、原子力発電に主力の座を奪われた感もあるが、二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーである事、、他の発電方法では出力を自由に調整できないのに対して、水力発電は出力調整が容易である事など有利な点も多く、今後も電力供給に一定の役割を果たすものと思われる。
特に最近では原子力発電の比率が高くなっているのだが、これは一定の出力で発電し続けるのに対して、電力需要は季節により、あるいは時間帯により大きく変動するため、ピーク時に対応するために、再び水力発電が重要な意味を持つようになっている。そのため夜間に余剰電力を利用して水を汲み上げ、昼間に発電する揚水発電が盛んに行われるようになっている。
水力発電の分類
水力発電は、落差を得る方式、水の利用方法、発電方法などでいろいろに分類できます。
ここでは主な分類を挙げておきます。

落差を得る方法

落差を得る方法によって3つに分類できます。

発電方式 水路式発電 ダム式発電 ダム水路式発電
発電方法 河川から直接、または取水堰から取水して、水圧管路を通して落差を得る方法です。
水路式は、地形にもよりますが、大きな落差を得ることができる反面、河川の水量の変動に応じて発電力が変動し、自由に出力を調整できません。ですから渇水時には発電力が大幅に低下してしまうことがあります。
ダムに水を貯め、そこからダム直下にある発電所に導水して発電する方法です。
水路式と異なり渇水時にも十分な取水ができますが、発電所がダム直下にあるので大きな落差を得ることができないことと、ダムの水位が下がると落差も小さくなり、発電力が低下してしまうのが欠点です。
水路式とダム式の両方の性質を兼ね備えた方式で、ダムで水を貯め、そこから取水して水圧鉄管で十分に落差を得て、発電する方式です。これだとダムで水を貯めるため、渇水時にも取水できることと、落差も大きく確保することができるので、大規模な発電を安定して行えます。ですから日本の大規模な発電所はたいていこのダム水路式となっています。
構成図 水路式発電 ダム式発電 ダム水路式発電
実例 愛本堰堤 宇奈月ダム 黒部ダム
愛本堰堤 黒東第一水力発電所 宇奈月ダム 宇奈月発電所 黒部ダム 黒部第四発電所

水の利用方法

水の利用方法によって3つに分類できます。

発電方式 自流式(流れ込み式) 調整池式 貯水池式
発電方法 水を貯めないで取水する方式です。ですから取水量が河川の水量の変動に依存するので自由に出力を調整できません。
多くは水路式発電に相当しますが、ダム式発電の場合も貯水をせずに取水のみの機能しかない場合は自流式に該当する場合もあります。
水を貯めますが、比較的短時間の運転が可能な貯水量しか持たない場合は、調整池式となります。導水路の途中に調整池を持つ水路式がこれに該当しますが、ダム式、ダム水路式の場合も取水量に比して貯水量が多くない場合は調整池式に該当する場合があります。 水を大量に貯めるので、比較的長期間の連続運転が可能な場合は、貯水池式となります。
大規模なダム式、ダム水路式の多くはこれに該当しますが、貯水量が取水量に比して少ない場合は、調整池式に該当する場合もあります。
実例 猿越ダム 小牧ダム 有峰ダム
猿越ダム 大長谷第三水力発電所 小牧ダム 小牧発電所 有峰ダム 有峰第一発電所

発電方法

発電方法によって、大きく2つに分類できます。

発電方式 一般水力発電 揚水発電
発電方法 水を河川やダムから取水して発電しますが、同じ水を複数回利用せず、そのまま下流に放流する方法です。
この場合、完全に自然のエネルギーだけで発電していることになります。
ダム式、ダム水路式、水路式のいずれも一般水力発電を行っているケースが多いです。
現在、富山県にある発電所はすべてこの方式です。
ダムを2つ持っていて下流のダムから上流にあるダムに水をポンプ水車によって汲み上げることができる方式です。
ですから水を繰り返し利用します。この揚水発電では、主に夜間に余剰電力を用いて、水車を回して水を汲み上げ、昼間には汲み上げた水を利用して発電します。言ってみれば蓄電池のような役割を果たしているわけです。
揚水発電の場合は、必ずダム式またはダム水路式発電となります。

揚水発電

揚水発電は、発電所の上下に貯水池を設け、上部の貯水池より流して発電した水を下部の貯水池に溜め、 深夜の余った電力で下部の貯水池から上部の貯水池へと汲み上げて再利用する発電方法です。
大規模な原子力、火力発電所は出力を絞り切るのに時間がかかるため、夜間に急に出力を下げられず、電気が余ってしまうので、この電力を利用して水を汲み上げています。
揚水式水力発電所は、低負荷時に電力系統を安定させるための負荷としての役割も担っています。
富山県内には現在では揚水発電は行われていませんが、長野県では奈川渡ダム水殿ダムおよび稲核ダムで揚水発電を行っています。
揚水発電を実現する場合、ダムが2つ必要なばかりでなく、他からの送電も必要なため、莫大なコストがかかります。
しかし揚水発電所は、一般に大量の水を使い大出力のポンプ水車を持っていて、一般水力よりもはるかに大出力の発電を行います。

揚水式水力発電は、河川の流入分を含むかどうかで2種類に分けられます。
種 類 純揚水式発電 混合揚水式発電
条 件 上部貯水池へ河川からの水が流入しないかしても少量で発電には寄与しない発電方式です。つまり下部貯水池から汲み上げた水だけを上部貯水池に貯めています。大水量を使う大出力の発電所が多いのですが、短時間しか連続運転ができません。 上部貯水池に河川からの水が流入し、発電に利用される発電方式です。
出力は純揚水式よりは少ないことが多いようですが連続運転が可能です。
実 例 神流川水力発電所
南相木ダム-上野ダム)
安曇水力発電所
奈川渡ダム水殿ダム

揚水発電の仕組み
奈川渡ダム 水殿ダム 揚水発電の仕組み