富山県のダム
ゲートとバルブ 
ダムには、水を下流に放流するためのゲート(水門)やバルブ(弁)が設置されています。
河川維持用水を放流するため、あるいは洪水時に放流するために使用します。
また発電や灌漑用水などの利水のために取水する取水設備も設置されているのが普通です。
ここでは放流時に使用するゲートおよびバルブについての分類を挙げてみましょう。
設置位置に関する分類
クレストゲート
ダムの堤頂部に設置されるゲートです。クレストとはダムの堤頂部のことです。
一般に、異常洪水時にダム天端からの越流を防ぐための非常用ゲートとして使用されます。
ここが自然越流式の非常用洪水吐になっているダムも多いです。

神二ダムの9門のクレストゲート
神二ダムの9門のクレストゲート
オリフィスゲート
堤体の中間に設置されるゲート。
ある程度水位が上昇したときにここから放水して洪水調節を行うために使われます。
城端ダムのオリフィスゲート(上2つ)とコンジットゲート(放水中)
コンジットゲート
放流管ゲートのこと。堤体中の下部に設置されます。
洪水調節用の大容量の高圧放流設備として設けられるゲートを指すことが多いようです。
クレストゲートとコンジットゲートの両方を備えたダムがよく見られ、それぞれ非常用洪水吐、常用洪水吐として使われます。
構造上の違いによる分類
スライドゲート
板状の扉体が支持物に設けられた溝を上下に動くタイプのゲートです。
用水などのゲートに良く見られるのがこのタイプです。
ダムではスライドゲートを用いることは比較的少ないようですが、桁構造を用いた大型のゲートが用いられているダムもあります。
扉体と溝の間の摩擦が大きいため、水門を閉める際に押し下げる力が必要なので扉体はシャフトで上下されます。
最近では、油圧式シリンダーで動作する高圧スライドゲートが採用されているダムもあります。
ローラーゲート
スライドゲートの扉体にローラーを取り付け扉の開閉の抵抗を少なくしたゲートです。
スライドゲートに比べて扉体と溝の間の摩擦が小さく、扉体の自重で閉まるのでワイヤーで上下されます。
レール及びローラーは水圧を受け止める側のみ設けられています。
ローラーゲートは、主に大規模の水門に用いられており、ラジアルゲートとともに最も一般的なゲートです。
ラジアルゲートに比べると、ゲートを上に引き上げるため高さが大きくなり、逆に前後左右の厚みは小さくて済みます。

刀利ダムの6門のローラーゲート
ラジアルゲート
表面が円弧状の扉体を持ち、軸へ放射状に扉体を支える腕が伸びており、軸を中心に扉体が上下するゲートです。
以前はテンターゲートと呼ばれましたが、現在はラジアルゲートという呼び名を使用するようになっています。
ラジアルゲートは、ゲートを弧状に引き上げるためにローラーゲートに比べて高さが小さくできるいう利点がありますが、逆に前後方向の厚みが必要となり一長一短です。
最近開発された、引張りラジアルゲートと呼ばれるタイプのゲートは、従来のラジアルゲートにかかる荷重は圧縮荷重であるのに対し、引張りラジアルゲートにかかる荷重は引張り荷重となるため、圧縮には弱く引張りに強いという鋼材の特性を生かした構造だということです。

小牧ダムの上流側から見たラジアルゲート 小牧ダムの下流側から見たラジアルゲート
フラップゲート
水路の底に板(扉体)を敷き、その上流側を固定し支点にして下流側を引き上げることによってせき止めるゲートです。
板の上下は板の上方からワイヤーで引き上げたり、板の下部よりシリンダーで押し上げる方法が取られます。
常に扉体の上方を越流するため、水位調節が容易、浮遊物が滞留しづらいという利点があります。
比較的、採用例は少ないようです。
ローリングゲート
円筒形の扉体を回転させるゲートです。
下流側にラックギヤ、扉体にピニオンギヤが設けられており、扉体に巻きつけたワイヤーを巻き取るとラックギヤを扉体が上っていき開門します。
また、閉門状態では扉体の上方を越流します。
扉体巻き上げ時の力が小さくて済む利点がありますが、ダムの採用例は少ないようです。
ハウエルバンガーバルブ
河川維持水などの小流量放流用に設けられる固定コーン水流分散型バルブです。
バルブの開閉はコーンの外側の筒を移動することによって行い、コーンの部分により水流を分散します。
コーンの周囲が開放されていて水流が拡散するため水勢が急速に衰えます。
これが派手なシャワー放水となるので観光になるくらい人気があります。
ダムの放流管に広く用いられています。富山県では黒部ダムと刀利ダムで使われています。

刀利ダムのハウエルバンガーバルブ 刀利ダムの放水シーン
 
ホロージェットバルブ
河川維持水などの小流量放流用に設けられる可動コーン中空水流射出型バルブです。
バルブの開閉はコーン自体を移動することによって行い、電動スピンドルや油圧で開閉します。
コーンから先も開放されず水流をまとめる構造になっている事により、水流自体は拡散せず遠くへ飛びますが、スプリッタから空気が供給されることで高い減勢効果があります。
ハウエルバンガーバルブと並びダムの放流管に広く用いられています。