Q1.彗星は、どんな天体ですか?
A1.惑星探査機などまだ夢であった1950年,著名な彗星研究者ホイップル博士は,彗星の本体を「汚れた雪玉」と予言した。
そして1986年,探査機はハレー彗星がまさにそのようなものであることを明らかにした。
また1994年,木星に衝突したシューメーカー・レビー第9彗星は,彗星が粉雪でつくった雪玉のようにやわらかいものであることを想像させた。
彗星は太陽に近づくと「核」とよばれる本体の表面から,水やちりが昇華し,まわりに「コマ」とよばれる大気をつくって明るく輝く。
コマの中のちりの粒子は数ミクロン程度と非常に小さく,光の圧力を無視できない。
そのため,ちりは太陽とつねに逆方向に吹き流され,「ちりの尾」がつくられる。
コマの中のガスは,太陽からの紫外線などによって電気をおびた粒子(イオン)になる。
コマの中のイオンは,太陽風の電磁場の影響を受けてコマからひきずりだされる。
そしてやはり太陽と逆の方向に「イオンの尾」がつくられることになる。
彗星の核は小さく,また太陽に近づくとコマでかくされてしまうため,核の大きさや形を知ることはむずかしい。
しかし1986年,ESA(ヨーロッパ宇宙機関)が打ち上げたハレー彗星探査機ジオットが,はじめて核の鮮明な姿をとらえることに成功した。
核は長径15キロ,短径8キロのいびつなジャガイモのような形をしていた。
ハレー彗星の表面には,ガスのジェットを噴きだす部分やクレーターなどがみられた。
彗星の表面が黒い物質でおおわれていることもわかった。
コマの中には有機物をつくる材料物質である炭素,水素,酸素,窒素からなる粒子がみつかっている。
彗星表面の黒い物質は有機物である可能性が高い。
1994年,木星に衝突したシューメーカー・レビー第9彗星は数多くの小片に分裂した。
そのうち大きなものは,すべて1キロ程度の同じ大きさのものであったようだ。
彗星の中には直径1キロ程度の雪玉がいくつか固まったようなものもあるのかもしれない。
彗星の構造
彗星の構造
彗星が大きな尾を引くのは、太陽に近づいたときだけである。
太陽の光と電磁場の影響で、太陽の反対側に尾を引くのである。
太陽に何回も近づくと彗星の核を作る氷やちりが次第に昇華してしまうので、やせ細って衰えてしまう。中には、ばらばらに分裂してしまった彗星も観測されている。
ハレー彗星
ハレー彗星
ハレー彗星は、76年の周期を持つ短周期彗星である。
核からイオンの尾とちりの尾を太陽の反対側にたなびかせている。
シューメーカー・レビー第9彗星
シューメーカー・レビー第9彗星
木星に衝突したシューメーカー・レビー第9彗星が木星の潮汐力で粉々に粉砕される様子を撮影した写真である。
Q2.彗星には、長周期彗星と短周期彗星があるというが、どのようなちがいがあるのか。
A2.これまで彗星は約900個発見されている。その多くは200年以上の周期をもつ長周期彗星である。
シューメーカー・レビー第9彗星も,木星の重力にとらえられる前は長周期彗星であったと思われている。
長周期彗星のやってくる方向はさまざまである。
また,軌道を調べると2万〜10万天文単位以上もはなれることがわかる。
彗星は太陽から遠ざかるにつれて速度が遅くなるので,長周期彗星のほとんどは太陽から遠くはなれたところに長くとどまることになる。
太陽系の外からみると,彗星は広大な球殻状の雲のように存在しているようにみえるであろう。
最近ではこの雲のことを「オールトの雲」と呼んでいて、提唱者の名をとって「オールトの仮説」とよばれる。
オールトの雲(オールトのくも)あるいはオールト雲(オールトうん)とは、長周期彗星や非周期彗星の起源として太陽系の外縁を取り囲むように存在していると言われている、水・一酸化炭素・二酸化炭素・メタンなどの氷や、岩石といったものを主成分とする天体群のことである。現時点ではまだ直接的に確認されたわけではないが、矛盾する証拠もないので有力な仮説であると言える。仮説の検証はまだむずかしいが,より精度の高い望遠鏡によって近い将来,ほかの太陽系のまわりに発見されるかもしれない。
200年以下の周期をもつものは短周期彗星とよばれる。76年周期のハレー彗星をはじめとして,約200個が今のところ知られている。
短周期彗星のほとんどは黄道面付近に軌道をもつ。これらの彗星は、何度も太陽に接近するため次第にやせ細り、消滅するものも観測されている。また軌道が変えられて、観測できなくなるものもあり、太陽系の外へ飛び出したか、長周期彗星になったかが考えられる。
短周期彗星は、エッジワース・カイパーベルトが起源と考えられている。
エッジワース・ベルト (Edgeworth belt) は、太陽系の海王星軌道(太陽から約30天文単位)より外側の黄道面付近にある、天体が密集した、穴の開いた円盤状の領域である。外側の境界はあいまいだが、連続的にオールトの雲につながっていると考えられる。
エッジワース・カイパーベルトもこれまでは仮説に過ぎなかったのであるが、ハッブル宇宙望遠鏡などの観測技術の進歩によって海王星以遠にも多数の天体があることが確認されていて、この仮説が現実的になっている。
エッジワース・カイパーベルトは、便宜上、狭義では48〜50天文単位まで、広義では数百天文単位までと定義されている。48〜50天文単位より外側を散乱円盤という。
太陽系外縁天体のうち、エッジワース・カイパーベルトに位置する天体をエッジワース・カイパーベルト天体 (Edgeworth-Kuiper belt Object, EKBO) ともいい、短周期彗星と、おそらくはオールトの雲の起源だと考えられている。現在では1000個以上のEKBOが確認されている。冥王星やカロンもEKBOに分類される。
現在のところ、太陽系の外から来たと考えられる放物線軌道や双曲線軌道をもつ彗星は観測されていない。
非周期彗星として知られている彗星は数多く確認されているのだが、これらも数千年後には再び姿を現す可能性があり、本当に放物線軌道をとっているのかどうかは定かではない。そのため非周期彗星も長周期彗星として分類されるのが普通である。
現在まで明確に軌道がわかっているのは長楕円軌道をもつ彗星だけであるが、もちろん太陽や惑星の重力の影響を受けて軌道が変えられることも考えられるので、すべての彗星が太陽系に属するものだとはいえない。太陽系の外に追い出されたと思われる彗星も確認されている。
長周期彗星と短周期彗星の軌道
彗星の軌道
Q3.彗星はどうやって生まれ、どこから来るのか?
A3.彗星の起源と進化については,まだ決定的な説はないといえる。
一つの考えは次のようなものである。
氷を多く含むことから,彗星は太陽の熱で温まりすぎないように,外惑星の存在するところ,あるいはそれより遠くで粒子が集まってできたと考えられる。
しかし,逆に遠すぎると粒子が少なくなり,彗星はつくられにくい。
せいぜい太陽から100天文単位はなれたところにできたのであろう。
つくられた彗星は惑星の重力の影響で軌道をかえ,数万天文単位はなれた領域まで飛ばされる。
太陽の重力の影響が小さくなると,彗星は近くを通るほかの恒星によって簡単に軌道がかえられる。
その結果,ふたたび太陽の近くまでもどってくる彗星の数は少ない。
太陽の近くにもどってこられなくなった彗星のうち,偶然ふたたび軌道がかわり,太陽の近くにもどってきたものが長周期彗星なのであろう。
短周期彗星は,長周期彗星が太陽に近づいたときに,惑星の重力の影響で惑星領域にとどまったものか,あるいはカイパー・ベルトからやってきたと考えられている。
カイパー・ベルトとは,形成後に飛ばされなかった彗星が,数十〜数百天文単位の距離にリング状に分布すると思われる領域である。
最近になって海王星以遠の天体が数多く確認されるようになり、カイパー・ベルトの存在が現実的にも認められるようになってきている。これらに属する天体はエッジワース・カイパーベルト天体(EKBO)と呼ばれ、冥王星やカロンもこの仲間である。
以上は彗星の太陽系起源説の一つの考え方である。実際にもこの仮説は現時点で矛盾がなく、かなり有力な仮説であると言える。
一方,彗星はそもそも星間雲のような太陽系の外で生まれ,そこから長い旅を経て太陽系にやってきたのだと考える人もいる。しかし太陽系の外からやってきたのだとしたら,どのようにして太陽系にとらえられたのかといった問題が残る。
彗星がどこでどのように生まれたかということは,太陽系や星間雲の起源の問題とも密接にかかわってくる。今後の研究がまたれる。
彗星内部は熱による変成を受けていない,できたころのままのはずである。
彗星が太陽系でできたという考えが正しければ,彗星の物質は彗星のできたころ,つまり太陽系の生まれたころのようすを解き明かす大きな手がかりになるにちがいない。