福井県内の廃止路線
福井県内の廃止路線の概要
国鉄三国線の分岐駅であった芦原駅
国鉄三国線の分岐駅であった芦原駅
福井県内にはこれまで多数の鉄道路線が建設されてきましたが、この県では富山県や石川県とは異なり私鉄線が統合されず、京福電気鉄道と福井鉄道の2つの鉄道事業者が路線を持っていました。
廃止された路線のうち、国鉄・JR線では、三国線(金津-芦原間4.5km)が1972年に廃止されています。
福井県内では、国鉄・JR線が廃止されたケースが三国線のみで、他の路線は維持されています。
越美北線も2004年7月18日の福井豪雨による水害により長期間の運休が続いていて廃線になりかけたこともあったのですが、2007年6月30日に全線復旧して、営業を再開しています。一時はどうなるかと思いましたよ。
越美北線は、福井県の中央部を東に伸びる路線で山間地を通るので冬季はバス代行では当てにならないし、この路線がなくなると大野市が寂れてしまうのが目に見えています。もっとも現在も列車本数は極めて少なく、経営上は極めて困難と言えます。
国鉄三国線は、金津-三国港間9.8kmを結ぶ路線だったのですが、1944年に金津-芦原間がいったん休止となり、芦原-三国港間5.3kmが京福電鉄三国芦原線として電化された上で継続していました。戦後になり休止となっていた三国線が再開されたという経緯があります。
私鉄線は、前述したように京福電気鉄道と福井鉄道がそれぞれ路線を持っていました。
京福電気鉄道は、京都市に本社を持つ電鉄会社で福井県内には次の4路線を保有していました。

 路線名  区間 総延長
 越前本線  福井-京福大野  36.4km
 三国芦原線   福井口-三国港  25.2km
三国-東尋坊口  1.6km
 丸岡線  本丸岡-西長田  7.6km
 永平寺線  金津-永平寺  24.6km
4路線 合計  95.4km

かつて永平寺口駅から永平寺線が分岐していました
かつて永平寺口駅から永平寺線が分岐していました








このうち、三国芦原線の間1.6kmは、戦時中に不要不急線として1944年に休止され、そのまま廃止になっています。ただし、前述したように国鉄三国線を転換して芦原-三国港間が電化されています。
その後、丸岡線が1968年に廃止となり永平寺線も1969年に大半が廃止され、越前本線も勝山-京福大野間8.6kmが1974年に廃止となっています。
さらに2000年(平成12年)12月17日に越前本線志比堺 - 東古市間で列車衝突事故があり、2001年(平成13年)6月24日には越前本線保田 - 発坂間で再度の列車衝突事故が発生し、半年間に2度も電車同士の列車衝突事故を起こすという重大な事態が発生しています。
事故の翌日からは、全線の列車運行を停止し、バス代行となっています。
国交省からは同年7月には「安全確保に関する事業改善命令」が出されています。これに従って車両更新、信号系統改良、ATSの設置などの資本投入を迫られた京福電鉄には、この時点ではとてもそのような余力がなかったため京福電鉄は、福井鉄道部の事業継続が困難になったとして同年10月に廃止届を国土交通省に提出しています。
これにより越前本線と三国芦原線が廃線の危機に立たされたわけですが、福井県などが出資する第三セクターえちぜん鉄道が設立され、京福電気鉄道が2003年(平成15年)2月1日にえちぜん鉄道に越前本線と三国芦原線を譲渡して、越前本線は勝山永平寺線と名称を変えています。同時に永平寺線は、収支が見込めないことから廃止となっています。
そして同年7月19日からえちぜん鉄道は運行を開始する運びとなり、現在も活躍しています。これも一時はどうなるかと思いましたが、かろうじて踏みとどまったと言えましょう。
この際に手続き上は京福電鉄が越前本線、三国芦原線、永平寺線を廃止して、えちぜん鉄道が勝山永平寺線と三国芦原線を開業したことになっていますが、実質上はえちぜん鉄道が京福電鉄から路線を継承したと言えます。
結局、廃止された路線の総延長は、42.4kmとなります。また存続している路線の総延長は53.0kmとなります。
もし2路線が廃止されるようなことになれば福井県の鉄道網は壊滅状態になったでしょう。

一方、福井鉄道は福井市から南部にかけて次の3路線を保有していました。

かつて水落駅から鯖浦線が分岐していました
かつて水落駅から鯖浦線が分岐していました

 路線名  区間 総延長
福武線  越前武生-田原町 20.9km
市役所前-福井駅前   0.5km
鯖浦線 鯖江-織田 19.2km
水落-水落信号所 0.3km
南越線 社武生-戸ノ口 14.3km
3路線 合計 55.2km










しかし福武線以外は既に全線が廃止されて、現在運行しているのは福武線のみとなっています。
廃止路線の総延長は、33.8kmとなります。存続路線は、福武線の21.4kmとなります。
福井県の私鉄線は、7路線 合計150.6kmの路線があったものが、現在では3路線 合計74.4kmとなったわけです。
約半分の路線がなくなったわけですが、私鉄路線を極力維持しようと努力した結果がこのような状況であったと言えます。
鯖浦線と南越線は、いずれも福武線の支線のような路線でしたし、あまり人口が多くない地域を走る路線だったので、経営的に支えきれなかったと考えられます。
しかしそれでも一度に全線を廃止するのではなく、一部の路線を残して営業を継続するという努力は行っています。
北陸3県はいずれも積雪地帯で人口が少なく、一方でモータリゼーションが最も進んでいる地域と考えられるので、鉄道事業者にとってはたいへん苦しい経営環境であると思われますが、下記のグラフからも読み取れるように福井県内の鉄道路線は相当数が維持されていると判断することができます。それぞれの経緯から考えても、下手をすると私鉄線の全線と越美北線が廃止される可能性が極めて高かったわけで、それらが維持されているのはたいへん意義ある事実でしょう。
その要因としては、福井県が積雪地帯であること、特に越美北線や勝山永平寺線が走る地域は、積雪が多く冬季にはバスには頼れないことから鉄道の必要性を理解していたということでしょう。
福井鉄道も経営難から親会社の名古屋鉄道が撤退し、第三セクターによる運営に移管しています。
いずれの路線も全線廃止の危機に立たされて、第三セクターへの経営移管により路線を維持する事になっているのは偶然ではないでしょう。
現有路線がJR3路線で合計211.3kmと私鉄線で合計74.4kmで合計285.7kmとなります。
一方、廃止路線は合計80.7kmとなりますので、廃止率は、22.0%となります。
富山県の廃止率が14.8%なのに対してやや高いものの善戦していることが分かります。

廃止路線一覧
種別 路線名 廃止区間 総延長 軌間 単複 架線電圧 廃止日
鉄道 国鉄三国線  金津-芦原 4.5km 1,067mm 単線 非電化  1972年3月1日
福井鉄道鯖浦線  鯖江-水落信号所 2.4km 1,067mm 単線 600V直流  1962年1月25日
 西田中-織田 11.7km 1,067mm 単線 600V直流  1972年10月12日
 水落-西田中 5.4km 1,067mm 単線 600V直流  1973年9月29日
福井鉄道南越線  粟田部-戸ノ口 5.6km 1,067mm 単線 600V直流  1971年9月1日
 社武生-粟田部 8.7km 1,067mm 単線 600V直流  1981年4月1日
京福電気鉄道越前本線  勝山-京福大野 8.6km 1,067mm 単線 600V直流  1974年8月13日
京福電気鉄道丸岡線  本丸岡-西長田 7.6km 1,067mm 単線 600V直流  1968年7月10日
京福電気鉄道永平寺線  金津-東古市 18.4km 1,067mm 単線 600V直流  1969年9月18日
 東古市-永平寺 6.2km 1,067mm 単線 600V直流  2002年10月21日
京福電気鉄道三国芦原線  三国-東尋坊口 1.6km 1,067mm 単線 600V直流  1944年1月11日(休止)

福井県内の廃止路線マップ

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