富山県のダム
ダムの目的 

ダムは、水を堰き止め、貯留する構造物です。その目的も多岐に渡っています。
主な目的としては、洪水調節、河川維持用水、灌漑用水、上水道用水、工業用水、発電、消流雪用水などがありますが、変わったところではレクリエーション用というのもあります。

洪水調整

最も一般的な用途で、大雨が降ってもある程度の水をダムに貯めることで下流の洪水被害を低減させることです。
洪水期(だいたい6月〜10月)の間はダムの貯水量を少なめに設定し、大雨に備えます。
逆に渇水期(同じく11月〜5月)はダムに貯めた水を少しずつ放流し、水不足が起こらないようにします。
ダムには、洪水吐と呼ばれる放流口を必ず設置することになっていますが、洪水調節用ダムでは常用洪水吐と非常用洪水吐と2種類の洪水吐を持っているのが普通です。
最近では治水専用ダムも見受けられるようになり、普段はダム湖に水がないというダムもあります。
富山県では、久婦須川ダム熊野川ダム子撫川ダム境川ダムなどが洪水調節を用途に持つダムです。
久婦須川ダム 熊野川ダム 子撫川ダム
久婦須川ダム 熊野川ダム 子撫川ダム

河川維持用水

河川には一定の流量がなければ河川環境、河川利用、河川管理などに支障が生じることになります。
そこで、舟運、漁業、景観、塩害の防止、河川管理施設の保護などを総合的に考慮し、渇水時においても維持すべき流量が定められており、これを流量維持または河川維持用水と呼びます。
また河川において水量が十分にある時のみ取水できる不安定な取水がなされていた場合に、ダムを造ることによって常時取水できるように安定化させる用途の場合は不特定用水と呼ばれますが、これはすなわち河川維持用水とほぼ同様の意味を持ちます。
富山県では、布施川ダム朝日小川ダム室牧ダムなどがこれに当たります。
布施川ダム 朝日小川ダム 室牧ダム
布施川ダム 朝日小川ダム 室牧ダム

灌漑用水

農作物を育てるために必要な水を貯め、川の水が少なくなった時に流して水田や畑に必要な水を補給します。
畑に水を供給する畑地灌漑と水田に水を供給する水田灌漑に分けられますが、水量としては水田灌漑には大量の水が必要です。
この目的に利用されるダムは、アースダムに多いようです。
以前は灌漑用水が原因で紛争が発生したことも多かったのですが、河川法により(慣用)水利権が設定されるようになり、法的にはとりあえず紛争が起きないように整備されたと言えます。ただし渇水時にどう水を配分するかという問題はたえず残されています。
富山県では、臼中ダム刀利ダム湯谷川ダム、ほとんどのアースダムがこれに当たります。
臼中ダム 刀利ダム 湯谷川ダム
臼中ダム 刀利ダム 湯谷川ダム

上水道用水

水道水を供給するための水を貯めます。
ほとんどのダムでは、河川を利用して浄水場まで水を供給しているため、河川維持用水としての機能もあります。
日本は、国土が狭く人口密度が高いので、降水量が多いのに水不足になりやすいので、水道水確保は大変重要な意味を持ちます。
富山県では、白岩川ダム子撫川ダム宇奈月ダムなどがこれに当たります。
白岩川ダム 子撫川ダム 宇奈月ダム
白岩川ダム 子撫川ダム 宇奈月ダム

工業用水

工業用水を供給するための水を貯めます。
工業用水は、海水から取水することもありますが淡水が必要なものも多く、工業用水道を設置して大量の工業用水を供給する場合にはダムを設置する必要があります。しかしこれを用途にしているダムは比較的少ないようです。
工場は海岸沿いに多く建設され、そこでは海水を取水することも可能であるからでしょう。
富山県では和田川ダム境川ダムがこれに当たります。
和田川ダム 境川ダム
和田川ダム 境川ダム

発電

ダムから流す水を利用して水力発電を行います。
2つのダムを導水管でつなげ、水のエネルギーをより有効利用できる、揚水発電を行っているダムもあります。
富山県では、あまりにも有名な黒部ダムが発電専用ダムとなっていますが、これ以外にも有峰ダム小牧ダムなど多数のダムが発電目的で設置されています。富山県は、特に水力発電が盛んな地域ですので、発電用ダムは大変多いのです。
黒部ダム 有峰ダム 小牧ダム
黒部ダム 有峰ダム 小牧ダム

消流雪用水

流雪用水を供給するための水を貯めます。雪国にしかない目的です。
以前は地下水を汲み上げて消流雪用水に充てていたのですが、地盤沈下が発生することがあるので川の水を使うようになったのです。
この目的を持ったダムは、城端ダム境川ダム久婦須川ダムなど、ほとんど富山県にしか存在しません。
城端ダム 境川ダム 久婦須川ダム
城端ダム 境川ダム 久婦須川ダム

レクリエーション用

レクリエーションのためのダムです。水を利用した競技に用いたり、ピクニックなどに利用できるように整備されています。
この目的を持ったダムは、全国に石井ダム、長沼ダム、武庫川ダムの3ヶ所しかありません。
この中で実際にダム本体が完成しているのは兵庫県にある石井ダムだけです。
現在は、ダム堤体に多目的ホールを設けたり、ダム天端を展望台として開放するなどレクリエーションの場として整備中です。
もっとも正式にレクリェーション用と掲げてはなくても、ダムの周辺を整備して公園にしたり、ダム湖を利用してのカヌーの練習をしたりと実質的にレクリェーション用として利用しているケースは多いものです。